エンジンのかかっていないバイクを人の力で移動したりすることを「取り回し」と言いますが、普通二輪免許を取得したばかりのライダーにとってはなかなか大変ではないでしょうか。特に、女性ライダーはバイクを押したり引いたりする力が弱いので取り回しで四苦八苦することが考えられます。
以上を踏まえ、初心者ライダーにはやはり最初はできるだけ取り回しのしやすいバイクがおすすめ。そこで今回は取り回しやすいバイクだけ重量別にご紹介したいと思います。
取り回しがしやすいバイクの特徴
普通二輪免許を取得するとき、教習所で最初に指導されるのが「取り回し」です。簡単にいうとエンジンのかかっていないバイクを押したり引いたりして移動すること。駐車場の入出庫など、意外とバイクを自力で移動させなければならないシーンがあります。
さて、普通二輪免許を取得するため教習所に通っていた頃のこと。私の通っていた教習所では実技の終了後、教官から指定されたバイク置き場にバイクを戻さなければいけませんでした。これがまた、指示されるバイク置き場によっては坂になっていたり段差があったりなどなど、バイクを倒したりしないかハラハラしながら、どうにかこうにかバイク置き場にバイクを戻していたものです。
皆さんも、バイクの取り回しについて、教習所で四苦八苦した経験があるはず。なんとか普通二輪免許を取得後にもやっぱりバイクの取り回しには一苦労……といったところではないでしょうか。普通二輪免許を取得したからといって一朝一夕でバイクの取り回しがうまくなるわけでもありません。
せめて、取り回しの良いバイクにしようと思うのも当然のこと。では、取り回しのしやすいバイクとはどのようなバイクなのでしょうか。
車両重量が軽い車両
当然ながらバイクそのものが軽ければ取り回ししやすいですし、バイクそのものが重ければ取り回ししにくいです。軽い荷物は運びやすく、重い荷物は運びにくいのと変わりません。
例えば教習所ではホンダ CB400SFをはじめとした、中型のネイキッドタイプのバイクが使われています。教習仕様となっているため、市販モデルと比較すると10kgほど重量がありますがおおむね200〜250kgくらいです。
そのため、教習所のバイクが重たく感じたか、それほど重たく感じなかったかによって、おおよそ、取り回しがしやすいであろうバイクの重量を考えることができます。
ハンドル可動域が広い車両
バイクのハンドルの形状はおおよそ「バーハンドル」と呼ばれる一本のパイプを曲げて作られているシンプルなハンドルと「セパレートハンドル」と呼ばれる左右が独立して分かれているハンドルの2種類に大別できます。特にスーパースポーツなど、ハンドルポジションを低位置に設定しているバイクにはセパレートハンドルが採用されています。
ここで問題となるのがセパレートハンドルの可動域です。セパレートハンドルを勢いよく切るとハンドルの位置が低いため、タンク部分に当たってしまうのです。つまりハンドルの可動域が狭いといえます。
そのため、エンジンを切った状態ではUターンをするのにも何度か切り返しをしなければいけなくなってしまいます。
取り回しがしやすい車両
以上を踏まえて、ここからは取り回しやすいバイクだけを厳選してご紹介します。車両重量(排気量)別にご紹介するので、バイクを購入する際の参考にしてください。
バイクの排気量と重量は比例
基本的にはバイクの排気量と重量は比例します。例えば250ccであれば150〜200kg程度、600〜650ccであれば200kg前後、1,000cc超のビックバイクは200kg以上といったところです。そのためバイクの車両重量そのものは小型バイク<中型バイク<大型バイクとなりますが、同じ排気量のバイクでも重量には違いがあります。
ここでは特に車両重量の軽いものだけをピックアップしています。
400㏄以下
まずは排気量400cc以下の小型〜中型バイクをご紹介。カワサキのKLX230・スズキのRMX250S・ホンダのCB250Rの250ccクラスのバイクが揃いました。やはり、オフロードモデルには軽量で取り回しやすいバイクが多いということがうかがえます。
■KLX230/カワサキ
シンプルなオンオフスポーツモデルとして人気のカワサキ KLX230はスポーツモデルでありながら比較的取り回しがよく、シンプルな構造のエンジンを搭載しており、車両重量も134kgと軽量です。取り回しのしやすい250ccクラスのスポーツバイクであればこのモデルを特におすすめします。車両重量は134kgです。
■RMX250S/スズキ
スズキのエンデューロマシンであるRMX250の小型ストリートモデルがRMX250Sです。しかし、エンデューロマシンとしての性能にはいっさいの妥協がなく、オフロードツーリングにも耐えられます。すべての無駄を省くため、タンデムステップは使用せず、乗車定員を1名にしているのも特徴です。車両重量は128kgです。
■CB250R/ホンダ
ホンダのネイキッドロードスポーツモデル・CB250RはCB250Fから受け継がれる水冷4ストロークDOHC単気筒エンジンにより、単気筒特有のパワフルなトルクフィールが持ち味です。車両重量は144kgと250ccとしては軽量の部類。オフロードモデルではない250ccの軽量バイクとしておすすめのモデルです。車両重量は144kgです。
400㏄超
それではいよいよ400cc超の取り回しやすいバイクをご紹介します。小型バイクよりも取り回しのハードルは高くなりますが、中には車両重量が軽く、取り回し抜群のモデルがちらほらと見受けられます。ネイキッドタイプからスポーツタイプまで、幅広くピックアップしたのでまずはご覧ください。
■SR500/ヤマハ
ヤマハを代表するモデルといっても過言ではないSR。排気量500ccのモデルがSR500です。まさに、王道ともいえるネイキッドバイクではないでしょうか。実はSR400は現行モデルの販売が継続されていますがSR500は販売期間が短かったため、現在では中古価格が上昇しています。
500ccバイクとしては比較的軽量であることも、長年愛されるモデルとなった理由だといえるでしょう。車両重量は170kgです。
■MT-07/ヤマハ
スポーツタイプでありながら日常的なライディングでの乗りやすさを重要視したヤマハのMT-07。ヤマハでは人気のあるモデルのひとつです。特徴は、街乗りも視野にいれたコンパクトかつ軽量ボディ。排気量700に対し車両重量184kgと軽量であることからも非常に乗りやすいバイクだといえます。車両重量は184kgです。
■CBR600RR/ホンダ
ホンダのスーパースポーツバイクCBR600RRは、ミドルクラスのスポーツバイクではスポーツバイク初心者でも比較的乗りやすいモデルとして人気があります。特に最新モデルでは最新鋭の電子製制御技術がつぎ込まれており、高度なライディングスキルがなくてもスポーツモデルバイクを乗りこなすことができます。車両重量は194kgです。
■Z650/カワサキ
カワサキのスポーツネイキッドモデルであるZ650。カワサキらしいスポーティーなルックスが目を引きます。スポーツバイクには抵抗あるけどスポーツバイクに憧れはあるというライダーにもおすすめしたい1台です。
ツーリングでも街乗りでも抜群の乗り心地を発揮、スリムでコンパクトな車格のため650ccでも比較的取り回しやすく足付きもいいことが特徴だといえるでしょう。車両重量は189kgです。
■レブル500/ホンダ
最後にご紹介するのは女性にも人気のあるホンダのレブル500です。シンプルなスタイリングのアメリカンクルーザーは男性だけでなく女性にも受け入れられました。比較的シート高が低いのも女性から支持される理由でしょう。ミドルクラスに乗りたい小柄な男性にもおすすめできるモデルです。車両重量は190kgです。
ハンドル可動域
さて、バイクのハンドルの形状から、「バーハンドル」と「セパレートハンドル」では、特に、「バーハンドル」の取り回しが良いことは、先にご紹介したとおりです。
スーパースポーツなどにみられる「セパレートハンドル」はハンドルを切るとタンク部分に当たるので、取り回しが良いとはいえません。バイクの取り回しでは何度かハンドルを切り返さなければいけなくなってしまいます。
実際に乗ってみないことにはなんともいえないところはありますが、取り回しを重要視するのであれば、基本的にはネイキッドタイプを選ぶようにしたほうがいいでしょう。ただし、今回ご紹介したバイクにも比較的ネイキッド寄りのスポーツバイクもあるので、合わせて検討してみていただければと思います。
取り回しのコツ
それでは、最後にバイクの取り回しのコツについてご紹介します。残念ながらバイクは自立してくれません。車体を垂直にして支えるようにします。垂直にさえしてしまえば最低限の力だけで支えることができます。
前進するときは前傾姿勢になり「腰で押す」ことを意識するようにしましょう。後退するときは左手はハンドル、右手はシートに当てます。そして、前進と同様、腰に力を入れて押すようにします。横歩きではなく、腰をひねり、進行方向を向くのがポイントです。
特に後退するときはステップに足元が引っかかりやすく、バイクの転倒にもつながるので車体と足元は一定の間隔を空けることをお忘れなく。また、旋回するときは、旋回する方向に車体を傾け、旋回する方向とは反対の手に力を入れることがポイント。左旋回時には腰をタンクに押し当てるようにすることで、バランスが取りやすくなります。
まとめ
今回はバイクの取り回しやすさに重点を置いて、重量別におすすめ車両をご紹介しました。特に普通二輪免許を取得したばかりだと、取り回しのしやすいバイクのほうが安心ですよね。最初のバイクは取り回しやすく、その後バイクの取り回しがうまくなったら、また他のバイクも検討してみてはいかがでしょうか。
女性だとバイクを押したり引いたりする力が弱いため、今回の記事を参考にしていただければと思います。