ここ数年、メディアで目にすることが多くなった「脳科学」という言葉。脳はトレーニングで鍛えたり、コントロールすることもできるのだとか。

私たちが考えている以上に、脳は深く感情や体と密接な関係にあるようです。
「バイクに乗ると気分がスッキリする」のは、10年も前に実験で立証されてたって知ってました?
脳科学とバイクとの関係、今回はちょっと深掘りしていきたいと思います。

バイクに乗ると気分爽快!でも、それってなんででしょう?

「バイクで走ると無心になれる」「嫌なこともバイクに乗ると忘れてしまう」
バイクを趣味にしている人の多くが感じているのではないかと思います。

「悩みなんてバイクで吹き飛ばせばいい」バイクの楽しさを教えてくれた先輩が、よく言っていました。

「そうそう」とか「わかる」って声が聞こえてきましたね…。
バイクが好きだから、そう感じるんだろう…と半数以上の人はこのように感じているのではないでしょうか。

しかしながら、好きだからというだけで気分がスカッとするのであれば、バイク以外の趣味でも同じように感じるはずですよね。だって、バイクに乗らない人から見れば「体はむき出しで危ない」「事故も多い」「運転が荒い」と思われることが多いじゃないですか。

本当のところ、雨の日はスリップするから乗りたくないし、疲れているとコケそうになるのも嫌です。急な雨にずぶぬれになって風邪をひいたこともあるし、ツーリング先でエンスト起こして最低な日だってあります。

バイクに乗るのはいい事ばかりじゃないのに、「スカッとする気持ち」が忘れられずバイクを走らせてしまうのはどうしてでしょう。

実は「スカッとする気持ち」いわゆる心と脳の関係は脳科学で実証されているんです!
バイクで感じる「スカッとする気持ち」は脳科学的な観点からはどう見えるのか、気になりますよね。

脳はバイクに乗っている時、どんな風に働いているのか、脳科学の世界から掘り下げていきましょう。

人間の脳はどんなときに「スカッとする」のか

もやもやした気持ちが爽快になったり、わだかまりが消えて胸がすくような気持ちになることを「スカッとする」と表現します。

毎日気分の良いことばかりではありませんし、仕事で失敗した時や恋人との気持ちのすれ違い、友達同士でのいさかいなど、イライラ・モヤモヤすることってよくあります。

そんなイヤな気分からスカッとする(気分が良くなる)時、脳はどんな状態になっているのか。また、どんな時に「気分が晴れる」「スッキリした」と感じるのでしょうか。
脳科学者の茂木健一郎さんの言葉から探っていきましょう。

リラックスと刺激のバランスがとれている時

最新科学では、運動をすると脳から「BDNF(脳由来神経栄養因子)」物質が分泌され、集中力や記憶力がアップすることがわかっています。特に「走る」ことで得られる爽快感は、脳内物質が放出されることで生み出されるものです。

セロトニンはリズムを取ることで分泌されやすくなるので、走るだけでなく、リズムに合わせて「歩く」ことでも同様の効果を得ることができます。脳を「空っぽにすること」こそが、記憶の整理やストレス解消への早道といえるわけです。

音楽を聴きながらダラダラ走るよりも、体の力を抜いてリラックスしながら「リズムに集中」して歩くだけでも、気分がスッキリするそうです。

DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)の活性化

ぼんやりしている、ゴロゴロしているのに疲れてしまうのは、脳の領域の1つ「DMN」が活性化していないからだと言われています。

気分転換にとスマホばかり見ていたり、カフェインを摂取しすぎてしまうとDMNの活性化が止まってしまいます。適度な刺激が必要でも、デジタル機器は脳に負担をかけてしまうので「疲労脳」になってもリラックスはできません。

デジタルに頼らない方法でリラックスするには、デジタルから離れて自分を意識することが大切なのだとか。運動だけでなく、呼吸を意識する(深く呼吸することで集中力をあげる)とDMNが活性化し頭がスッキリするそうです。

新しい刺激を取り入れる

茂木健一郎さんの推奨する「旅ラン」は、走ることに加えて「知らない土地で新しい情報を脳に与える」ことができます。目に写るものが適度な刺激となり、DMNが活性化していくと気分がリフレッシュされ、気持ちがスッキリ。

確かに、観光地を歩いてのんびりと回った方が車で移動するより心に残ります。
これ、気の向くままにバイクを走らせたり、止まってあちらこちらを歩き回ることでも同じような効果が得られる…ってことなんですよね。

知らない土地を走る、外界からの刺激が入る……それ、バイクの醍醐味じゃないですか!

自分では「リラックスしているつもり」がそうではなかったり、「しんどいな」と走ることが脳の活性化に繋がっていることがわかりました。

そして、人間の脳はリラックスしているときに、適度に新しい刺激を受けると気分転換できてしまうのです。
……それって、バイクが全部満たしてくれるのでは!?

ツーリングは脳に良い刺激を与えてくれます

「走る」といえば、ランニングやジョギングですよね。
有酸素運動は健康促進にも脳にも非常に良い影響を与えますが、「正しい走り方」をしなければ膝や腰を痛めてしまい走れなくなるリスクがあります。

また、普段運動しない人が急に走り出しても、「辛い」「苦しい」気持ちの方が強くなるので長続きしません。

その点バイクは、ランニングやジョギングのような肉体的な負担が少なく、かつ普段の行動範囲を超え未知の場所にいくことで、新鮮な刺激を受けやすくなっています。

乾燥した空気や冷たい風、太陽の温もりを体で感じることができ、気分よく走りながらも適度な刺激を受けられますよね。

また、仲間と一緒に走れば連帯感や安心感も生まれるので、これも刺激となり脳を活性化させることになります。
四季折々の風景や自然に触れながら心を解放できるバイクって、本当に素晴らしい乗り物です。

バイクで脳は活性化する

運転するという意味では「車だっていいじゃない」という声もありそうですよね。

確かに、車が好きな人は「運転すると気分がいい」と感じたり「スカッとする」人もいるように思います。近年は「AT車」がメインとなり、ドライブにギアを入れれば車はブレーキで止まります。

実は車の運転中、脳はあまり活動的に働いているわけではなく、通勤や通学ルートなど特によく通る道を走っているときには、常にリラックス状態です。危険を察知したり、操作するための背外側前頭前野の活動も活発ではなく、カーブや交差点でやや刺激を感じるだけです。

バイクも運転は半自動化(ルーティン化)している人も多いと思いますが、シビアにクラッチワークが必要であったり、カーブのバンクや急な飛び出しなど常に危険予測が必要なのでリラックスしすぎる、ということはありません。

ヤマハと東北大学の川島隆太教授の合同研究でも、「バイクに乗ると脳が活性化する」ことが実証されています。日常的にバイクを運転することで、記憶力アップに加え空間認識力が上がることがわかっています。

これはどういうことかといえば、危険察知能力があがるので事故を起こしにくく怪我をしにくくなるということです。

また、認知機能がアップするアンチエイジングにも効果が期待できるんです。
同時に、ストレスが軽減され精神的に安定するので、仕事や勉強にミスがなくなり毎日を楽しく過ごせるようになるのだとか。

「バイクに乗るとスカッとする」単なる気持ちよさのように見えて、実は脳の活性化やアンチエイジングにも役立っているんですね。そう考えるとバイクに乗るのが、なんだか一層楽しみになってきませんか?

スマホを置こう、バイクに乗ろう。乗るときはもちろん、安全運転で。

気が付けば、身近にはスマホやタブレットなどのデジタル機器が側にあります。
休日は動画を楽しんだりする人も多いとは思いますが、スマホが習慣化すると「インプット過多」により、認知機能や情報の処理能力が低下していきます。

結果的に、イライラすることが多くなり事故をおこしてしまったり、仕事や体調に悪影響を及ぼす事になります。

「気分が晴れない」「モヤモヤする」「やる気が出ない」のは、脳が疲れているんだから休ませて欲しいと言っているサインかもしれません。

そんな時にバイクを運転しても大丈夫なのか…と不安にかられるバイカーもいるでしょうけど、そんな時こそ「気を引き締めて安全運転する」気持ちを強くしませんか?

バイクは楽しさを体全体で感じることができる稀有な乗り物です。
「早く走る必要はない」「エンジンを楽しみながら愛車と走る」ことが、ライダーをいつまでも若々しく元気でいさせてくれるのです。

リターンライダー・現役ライダー関係なく、もっともっとバイクを楽しんでいきましょう!

オマケ:ATバイク VS MTバイク より脳が活性化するのはどっち?

左右手足で異なる操作を行うことで走るバイクは、脳科学の世界では早い段階から「脳が活性化する」と想定はされていたそうですね。ただし立証するには、科学的な根拠が必要になるわけで…

また、効率的に活性化させるにはどのようなバイクでも同じような結果になるのかも重要なポイントです。ぶっちゃけ、ATバイク(オートマチック)よりも手足をバラバラに使うMT(マニュアル)バイクの方が脳が活性化しやすいそうです。

走行に対して細かく繊細な対応をすることで、より脳が働き活性化が進むのだとか。要求される動作が多いほど、脳は一生懸命に働いてアンチエイジング効果も高まるのですね。

MTバイクの方が脳が活性化する結果にはなりましたが、ATバイクもゆるやかではありますが脳は活性化されていきます。好きなところを自由に走り、未知の景色に触れながら自然の刺激を受けられるのはバイクの醍醐味です。

バイクを楽しむ気持ちには、ATもMTも関係ないはず。
難しいことは考えず、気の向くままにバイクを走らせることが一番の気分転換なのです。

 

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