冬のバイクライディングでは、路面凍結や積雪により転倒リスクが大幅に高まります。
そのため、安全走行に適したタイヤ選びがとても重要になります。
特に「スタッドレスタイヤ」は冬の走行を助けてくれる強い味方です。
この記事では、バイク用スタッドレスタイヤの種類や特徴、メリット・デメリット、金額別のおすすめモデルから保管方法までをまとめて紹介します。
目次
バイクに冬用のスタッドレスタイヤはある?
バイク用にもスタッドレスタイヤはある
スタッドレスタイヤは、雪道専用のスノータイヤとして降雪地域では必須のアイテムです。
四輪車ではその認知度も高いため、雪が降る時期にはカー用品店でスタッドレスタイヤへの交換が勧められている場面を目にしたこともあるかもしれません。
バイクについては、車ほど認知されていませんが、バイク用にも専用のスタッドレスタイヤがあります。
国内メーカーでは、主にIRCやダンロップがラインナップを展開しています。
車よりも商品数が少ない
ただし、バイク用スタッドレスタイヤは四輪車用と比較して商品ラインナップが非常に少ないのが現状です。
選択肢は決して豊富とは言えず、限られたメーカーの製品から選ぶ必要があります。
主な対象は小排気量車、ビジネスバイク、小径ホイール装着車などに限定されており、すべてのバイクに適合する製品があるわけではありません。
このように選択肢は限られているものの、バイク用スタッドレスタイヤは確実に存在します。
また、スタッドレスタイヤ以外にも、バイク用チェーンやスパイクタイヤなどの冬用装備も利用可能なので、走行環境や条件に応じて最適な選択をしましょう。
スタッドレスタイヤのメリット・デメリット
ここでは、スタッドレスタイヤのメリット・デメリットの紹介をします。
メリット①:溝が太く、深い
スタッドレスタイヤは一般的なタイヤと比較して溝が太く、深くなっています。
これによって雪や氷の路面でもグリップ力が向上してしっかりと路面をとらえて走行することができます。
また、深くなっている溝は雪をかき出していく性能があり、タイヤの空転を抑制してしっかりと走行できるように工夫がされています。
メリット②:ゴムが柔らかい
スタッドレスタイヤに使われているゴムは、一般的なタイヤよりも柔らかい素材が使われています。
この柔らかなゴムにより、低温環境下でもタイヤの硬化を防ぎ、路面との接地性を維持できます。
雪道や凍結路面においてもゴムの柔軟性が保たれるため、接地面での摩擦力を最大限に引き出せます。
対照的に、夏用タイヤは低温下でゴムが硬化し、路面との密着性が低下して滑りやすくなってしまうので、覚えておきましょう。
メリット③:タイヤ表面にサイプがある
スタッドレスタイヤの表面であるトレッド面には、サイプと呼ばれる細かな切れ込みが無数に刻まれています。
このサイプが氷上走行時に重要な役割を果たします。
路面の微細な凹凸にゴムが密着することで摩擦力を向上させるのに加えて、凍結した路面に浮いた水膜を取り除いたり、雪を引っかいたりすることによって滑りにくく安定した走行を可能にしています。
メリット④気温が低いときにも使うことができる
スタッドレスタイヤは降雪時以外でも効果を発揮します。
最低気温が7℃を下回る環境では、スタッドレスタイヤの使用が推奨されます。
降雪がなくても気温が低いだけで、夏用タイヤはグリップ力が低下します。
また、日陰部分のみが局所的に凍結しているようなシチュエーションでも、スタッドレスタイヤは安全性を提供してくれるのが嬉しいポイントです。
メリット⑤:チェーンよりも静粛
スタッドレスタイヤは柔軟なゴム素材のみで構成され、スパイクタイヤやチェーンのような金属部品を使用していません。
そのため、乗り心地が良好で走行音も静かです。
雪が降り積もった路面はもちろん、低温の日常的な街乗りでも快適性を損なうことはありません。
デメリット①:燃費が悪くなる
スタッドレスタイヤは接地面を増やして、タイヤと路面との密着度を高めています。
しかし、接地面が増えるということは転がり抵抗も増えるということです。その分バイクのパワーが必要になるので、燃費が悪くなります。
また、夏用タイヤよりもスタッドレスタイヤは重量が増すため、これも燃費悪化の要因となります。
冬の期間は、燃料消費量が増えるということを想定しておきましょう。
デメリット②:乾いた路面で減りやすい
スタッドレスタイヤの特徴である深い溝と柔軟なゴムは、寒い時期や雪上では優れたグリップ力を発揮しますが、乾いた路面で使ってしまうと摩擦力が大きくなって熱を持ち、タイヤが摩耗しやすくなってしまいます。
また、スタッドレスタイヤと乾いた路面との温度域が合わず、操縦性や制動性能が低下することで運転しにくい場合があります。
乾燥路面での走行時は、特に注意深い運転が求められるでしょう。
デメリット③:転倒やスリップしてしまう可能性あり
四輪車の場合、4つのタイヤでリスクを分散できるためスタッドレスタイヤの効果を比較的安全に享受できます。
しかし、バイクは2輪のみで車体を支えているため、スタッドレスタイヤを装着していても、滑落や転倒のリスクは依然として高いままです。
バイクのその構造的な特性上、冬道走行における根本的な危険性は、大幅には軽減されないことを理解しておきましょう。
デメリット④:大型車のラインナップは無し
バイク用スタッドレスタイヤのサイズ展開は非常に限定的で、大型バイク用のサイズは基本的に見受けられません。
小排気量のスクーターやカブなどのビジネスバイクのサイズに合わせたものがほとんどです。
金額別おすすめのスタッドレスタイヤ
ここでは、金額別にオススメのスタッドレスタイヤを紹介します。
~7,000円台:ダンロップD502/D503/S106
ダンロップD503やS106はバイクエントリー向けの定番スノータイヤです。
タイヤサイズは14インチと17インチのビジネスサイズがあり、サイズが合えばコスパ重視で交換することができます。
- 商品名:ダンロップ D503/S106
- フロントタイヤサイズ:70/100-14 、2.75-14 (D503)
2.25-17 、2.50-17(D502、S106) - リアタイヤサイズ:2.75-14(6PR)、80/100-14(D503)
2.25-17 、2.50-17(D502、S106) - 公式ホームページ:サイトはこちら
7,000~14,000円台
IRCのSN12は圧雪路面での性能を重視されるユーザーにオススメのタイヤです。
原付スクーターや、カブ系などパターンやサイズが豊富です。
- 商品名:IRC SN12
- フロント/リア共通サイズ:3.00-10、2.75-14、2.25-17、2.50-17
- フロントタイヤサイズ:70/100-14
- リアタイヤサイズ:80/100-14
- 公式ホームページ:サイトはこちら
1.2~1.8万円台
IRC SN22は、ヤマハ・ギアやホンダ・ジャイロなどに適合するサイズ展開がされています。
配送業などの冬季業務で使用するプロフェッショナルからも信頼されている実績のあるモデルです。
- 商品名:IRC SN22/SN22S
- フロント/リア共通サイズ:90/100-10
- フロントタイヤサイズ:90/90-12、100/100-12
- リアタイヤサイズ:130/70-8、110/80-10、110/90-10
- 公式ホームページ:サイトはこちら
金額は市場相場ですが、バイク屋や用品店によって金額が異なる可能性があるので、実際にタイヤ交換を検討するときには実売価格を確認しましょう。
バイクの性能別おすすめのスタッドレスタイヤ
ここでは、バイクの性能別のオススメのスタッドレスタイヤを紹介します。
通勤スクーター
通勤用スクーターにはIRC SN12がオススメです。
低温環境でも確実な路面グリップを発揮する冬専用コンパウンドと、優れた排雪性パターンを採用しているからです。
90/90-12サイズなど、一般的なスクーターサイズに対応しており、市街地や軽微な積雪路面での走行に適しています。
カブ系のビジネスバイク
カブ系のビジネスバイクであれば、IRCのSN12やダンロップのD502、D503がオススメです。
14インチ、17インチなどビジネスバイクで一般的なサイズでは比較的豊富な製品ラインナップがあるため、使用環境や予算に応じて選びましょう。
それ以上の排気量のバイク
上述した条件に当てはまらないバイクや排気量が大きなバイクになってくると、スタッドレスタイヤのサイズ設定がありません。
それでも雪道を走行しなければならない場合は、チェーンを装着するのをオススメします。
外した冬用タイヤの保管方法
ここでは、外した冬タイヤの保管方法を紹介します。
直射日光を防ぐ
紫外線はゴムの劣化を促進する最大の要因です。
保管時は必ずタイヤカバーを使用するか、直射日光の当たらない場所を選んでください。
車庫やクローゼットなど、暗所での保管が理想的です。
湿気が多い場所
雨や湿気が多い場所にタイヤを置くと、タイヤの劣化を加速させます。
また、冬用のスペアホイールごと保管していると、湿気によりホイールが錆びてしまう恐れもあります。
湿気がある場所を避け、風通しの良い乾燥した場所に置くようにしましょう。
タイヤを清掃してから保管する
泥や油汚れが付着したまま保管すると劣化が早まり、タイヤの性能が落ちます。
保管前にはタイヤを綺麗にしてから保管しましょう。
タイヤの置き方
タイヤのみの状態での保管は接地面を置く縦置きがオススメです。
さらに、地面に置くよりもタイヤラックに保管するほうが変形を防げます。
ホイールが付いた状態では、重量を分散させるために横置きがオススメです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回はバイク用のスタッドレスタイヤについて紹介しました。
バイク用スタッドレスタイヤは確実に存在しますが、四輪車用と比較して製品バリエーションが大幅に限定されているのが現状です。
雪道走行に特化した性能はあるものの、対象は主にビジネスバイクやスクーターなどの小排気量車に限られるため、注意が必要です。
冬の期間もバイクでの移動が必要なライダーにとって、スタッドレスタイヤは貴重な選択肢の一つです。
しかし、バイクの根本的な構造上、二輪車での雪道走行は四輪車以上にリスクが高いことも覚えておきましょう。
今回紹介したスタッドレスタイヤの特徴やオススメタイヤを参考にして、タイヤを冬仕様に交換してみましょう。