本記事では、半ヘルが法律上違反となるケース、その条件や注意点、さらに半ヘル特有の危険性や他のヘルメットとの違い、安全に楽しむための装備や対策についても詳しく解説していきます。
バイクの半ヘルは違反?
「半ヘル(半ヘルメット、半キャップ型ヘルメット)」は頭頂部から耳の上部までを覆う帽体にあご紐で固定する構造のヘルメットです。
顔面やあご部分は基本的に露出しているスタイルで、装着が簡単、風通しが良い、開放感があるといった特徴から、アメリカンバイクやスクーターのライダーに好まれています。
半ヘルは違反ではない
半ヘルの着用そのものが直ちに違反となるわけではありません。
市販品の中には法的基準を満たした合法製品も存在します。
ただし、安全規格を満たしていない製品は違反となるため、すべての半ヘルが合法というわけではない点に注意が必要です。
違反にならないための条件は次の通りです。
1. 規格を満たしている
2. 簡単に外れないあごひもで固定できる
3. 衝撃吸収性や耐貫通性能を有している
1つずつ見ていきましょう。
半ヘルが違反にならないための条件①:規格を満たしている
バイク用ヘルメットには安全性を証明する規格マークが貼付されています。
主な規格は次の2つです。
PSCマーク(消費生活用製品安全法)
国が定める安全基準に適合していることを示すマークで、消費者の生命や身体への危害防止を目的としています。
SGマーク(製品安全協会)
一般社団法人製品安全協会が定めた安全基準に適合していることを認証するマークです。
この2つのマークのいずれか、または両方が貼付されているヘルメットであれば、合法的に使用できます。
半ヘルが違反にならないための条件②:簡単に外れないあごひもで固定できる
ヘルメットに関する道路交通法では、衝撃によって容易に脱げないよう、あご紐でしっかり固定できる構造が義務付けられています。
あご紐がしっかり取り付けられていないものや、構造が簡易で衝撃ですぐに外れそうなものは、事故時に脱げてしまう恐れがあり、思わぬケガにつながります。
場合によっては、重傷を負いかねません。
そのため、警察官の判断によっては違反とみなされるケースもあります。
半ヘルが違反とならないための条件③:衝撃吸収性や耐貫通性能を有している
道路交通法では、乗車用ヘルメットに衝撃吸収性および耐貫通性能を備えることが求められています。
一般的なヘルメットは、内装のスポンジに加え、発泡スチロールなどの緩衝材を内部に組み込むことで、事故や衝撃から頭部を保護する構造となっています。
しかし、一部の簡易的な半ヘルにはこういった部材が備わっていない場合があります。
またサイズが合わないために使用者が内部の緩衝材を取り外してしまうケースも見られますが、そのようなヘルメットは安全性能を満たさず、違反と判断される可能性が高くなります。
上記の要件以外にも下記のような条件があります。
- 重量が2kg以下であること
- 左右・上下の十分な視野が確保できること
- 人体を傷つける突起物などがなく安全なこと
総じて、運転手や周囲への安全性がしっかりと確保できていれば半ヘルであっても、法的には違反とはなりません。
乗車用ヘルメットの着用義務違反と違反点数・罰金
ここでは、乗車用ヘルメットの着用義務違反に関する規定と罰則について紹介します。
道路交通法での規定
道路交通法第71条の4では、大型自動二輪車または普通自動二輪車の運転者に対して以下を義務付けています。
- 乗車用ヘルメットを着用せずに運転してはならない
- ヘルメットを着用していない者を同乗させて運転してはならない
この規定に違反した場合、警察による取り締まりの対象となります。
ノーヘル(ヘルメット未着用)
ヘルメットを被らずに運転をしていると違反となります。
違反点数は1点で、反則金はありません。
外見から明らかにヘルメットを被っていないことが判別できるので、警察に止められてしまう可能性はかなり高いです。
基準を満たさないヘルメットの使用
ヘルメットは被っているがPSCマークやSGマークがついていない(認証していない)場合も違反となり、1点の違反点数となります。
こちらも罰金はありません。
違反点数1点は反則金がないものの、運転免許の記録に残ります。
ただし、実務上、警察官がヘルメットの規格適合性を現場で即座に判断することは困難な場合が多く、ノーヘルと比較して検挙率は低い傾向にあります。
しかし、検挙されにくいことと安全性は全く別問題です。
規格外ヘルメットや簡易的な半ヘルは、事故時に致命的な頭部損傷を引き起こすリスクが高く、法的処罰の有無にかかわらず使用すべきではないということを肝に銘じましょう。
半ヘルの危険性
半ヘルには法的に合法な製品も存在しますが、安全性の観点から見ると深刻なリスクが存在するのも事実です。
ここでは、半ヘルの危険性について紹介します。
顔面やあごの露出
半ヘルは頭頂部から耳上部までしか保護できず、顔面とあご部分は完全に無防備です。
事故や転倒時に、こういった部位が直接路面や障害物に衝突すると、顔面骨折、顎骨骨折、歯牙損傷など重篤な傷害を負う危険性が極めて高くなります。
特に大型バイクでは走行速度が高く、衝撃エネルギーも大きくなるため、半ヘルでは致命的な損傷を防ぐことができません。
風圧、振動の影響が大きい
高速走行時、半ヘルは風圧や振動により浮き上がりやズレが発生しやすい構造的欠陥があります。
特に、排気量の大きいバイクほど走行速度と振動が増大し、ヘルメットの安定性が損なわれやすいです。
あご紐の緩みや外れにつながり、最悪の場合ヘルメットが完全に脱げてしまう危険性があります。
事故時にヘルメットが脱落すれば、頭部保護という本来の機能が完全に失われてしまうことになるので、そもそも被る意味がなくなってしまいます。
飛来物、虫の直撃
半ヘルは顔面が守られていないので、前車がはねた小石や飛んできた虫などの飛来物が直撃してきます。
痛みを伴うのはもちろん、飛来物によっては流血するようなケガをしてしまうケースもあります。
視界を奪われることで、二次的な事故を誘発するリスクも無視できません。
視界が狭く感じる
顔面が露出しているため一見視界は広いように思えますが、実際には風圧により目を開けることが困難になります。
特に、高速道路など高速走行時には強烈な風圧にさらされ、実質的な視界は著しく制限されます。
このように、半ヘルは見た目の良さや快適性と引き換えに、安全性を犠牲にしてしまう特徴があるということを忘れないようにしましょう。
バイクのヘルメットのタイプ
ここでは、バイクのヘルメットのタイプとそれぞれのメリット・デメリットを紹介します。
半ヘル
半ヘルは耳から上部の部分を覆うタイプのヘルメットで、顔面やあごが露出しています。
メリットはヘルメットの中でもっとも軽量で風通しがよく、開放感がある点です。
デメリットは全体的に防護性能が低く、風圧や衝撃で脱落しやすい構造的欠陥があるということです。
飛来物から顔面を保護できず、事故時の重傷リスクも高いという弱点もあります。
ジェットヘルメット
側頭部まで覆うタイプで、半ヘルより保護範囲が広いものの、顔面とあごは露出しています。
半ヘルより高い防護性能を持ちながら適度な開放感を保ち、シールド装着により飛来物から目を保護できます。
快適性と安全性のバランスが取れたタイプですが、顔面保護が不完全で、風や飛来物の影響を受けやすい点と、フルフェイスより安全性が劣る点は理解しておきましょう。
フルフェイスヘルメット
脱落リスクが最も低く、風切り音や風圧の影響を受けにくく、飛来物から完全に顔面を保護できます。
夏場は暑く蒸れやすく、着脱に時間がかかり、閉塞感があるといった点がデメリットです。
オフロードタイプヘルメット
オフロードヘルメットは、山間部や林道、エンデューロのレースなどで使われているヘルメットで、長めのバイザーと長めのあごのデザインとなっています。
多くはシールドがついておらず、ゴーグルを装備するようになっています。
軽量で通気性が良く、広い視野を確保できますが、高速道路など公道での高速走行ではバイザーが風の影響を受けやすく、風切り音も大きいです。
ヘルメットを選ぶときには、自分の用途、季節、快適性などを考慮することが重要です。
ただし、最低限の安全性を確保するのは忘れないようにしましょう。
安全にバイクを楽しむために
ここでは、安全にバイクを楽しむために必要な対策や装備を紹介します。
基本的な保護装備
フルフェイスヘルメットや安全規格を満たすその他のヘルメット、プロテクターが装備されているジャケットやライディングパンツ、グローブやシューズを身に着けることで事故や転倒の際のケガのリスクを下げることができます。
ツーリング前にする対策
バイクの定期点検や運行前点検は欠かしてはいけません。
バイク屋さんなどで受ける定期点検ではオイル交換や、ブレーキフルード交換、エアクリーナーやプラグの点検などをしっかりと実施してバイクを良好な状態に保ちましょう。
また、ツーリングに出発する前にはタイヤ空気圧の確認、灯火類の作動チェック、チェーンの張り具合など、基本的な項目はチェックをすることです。
ツーリング中でも、無理な追い越しやスピード違反、体調の管理などに気を付けて走行しましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は半ヘルの違反性や様々なヘルメットの特徴について紹介しました。
半ヘルは見た目の魅力や開放感から多くのライダーに好まれています。
法律的に半ヘルだから直ちに違反になるということはありませんが、規格を満たしていないものは違法になる可能性はあります。
判断基準は、安全性です。
特に大型バイクでは走行速度が高い分、顔面やあごが露出している半ヘルでは転倒時や事故時のリスクが高くなります。
今回紹介した半ヘルのメリットデメリット、各ヘルメットの特徴を理解して、自分の用途に合わせたヘルメット選びをしてみてください。
ぜひ、プロテクション装備を整えて安全性と快適性を両立させたバイクライフを楽しみましょう。