国道の交通渋滞、乗用車で遭遇したら最後、その場から逃れることはできず、自転車並みの速度で進んで行くほかありません。すると、乗用車の真横をバイクが通り抜けていくではありませんか。

一般的には「すり抜け」といわれるこの行為。ドライバーとして「違反なのでは?」と思う反面、ライダーとして「違反ではないのでは?」と悩むところではないでしょうか。

また、混乱しがちなのが、追い越しと追い抜きです。すり抜けと追い越しと追い抜きはなにが違うのか、そして、そのどれがどのようなときに違反となるのかも、ライダーにとっては気になるはずです。

そこで今回は、バイクの追い抜き、追い越し、そしてすり抜けについて、道路交通法に基づいてご紹介していきます。ライダーの皆さん、今一度、交通ルールを見直しましょう。

「追い抜き」「追い越し」「すり抜け」とは? 違いを解説!

原付二種のような小型バイクでは、その機動力から、渋滞時に車両の列を追い抜いたり、追い越したり、すり抜けたりできるでしょう。追い抜き、追い越し、すり抜け、これらはすべて車両の列の隙間を潜り抜ける行為ですが、どのような違いがあるのでしょうか。

また、気になるのは、はたして、道路交通法ではどのような取り扱いになっているのかということでしょう。まずは、似て非なる、追い抜き、追い越し、すり抜けの違いについておさらいしていきます。

追い抜き

追い抜きとは、進路変更をしないまま車両を追い抜く行為をいいます。ウインカーは出さず、車両の前方に出る状況です。目の前の車両を追い抜くとき、追い越し車線に車線を変更することなく、車両の真横を通過します。追い抜きはバイクと車両との距離が接近するため、接触事故にもつながりかねません。

追い越し

追い越しは、進路変更をしてから車両を追い越す行為です。簡単にいうと、追い抜きと追い越しの違いは、進路変更をするかしないかだといえます。目の前の車両を追い抜くとき、一旦、追い越し車線に車線変更してから車両を追い越します。

この場合、バイクと車両との間には、一定の距離ができるため、追い抜きほど、接触の可能性は低いですが、追い越しに危険性がないということではありません。

すり抜け

バイクのすり抜けとは、交通渋滞時などに、文字通り、バイクが隙間を縫うようにしてすり抜けていく行為であるため、これまで説明した、追い抜きも追い越しも含まれます。

道路交通違反になるケース

バイク走行時の追い抜き、追い越しなどのすり抜けは、どのような状況で道路交通法違反となるのでしょうか。交通渋滞時、ライダーの特権ともいえるすり抜け。しかし、それで違反となってしまったり、事故を起こしてしまったりするわけにはいきません。

ここでは、ライダーの皆さんに知っておいていただきたい、実際に道路交通法違反となるケースについて、それぞれご説明します。

追い抜き

道路交通法では、走行中の車両の追い抜きをするとき、車両の右側ではなく左側から追い抜くことは、道路交通法違反にもなり得ます。これは、道路交通法において、路肩(つまり車両に向かって左側)走行が禁止されていることからも、ライダーであれば気が付くはずです。

実際に発生している、追い抜きでの事故では、車両からみて左側からの追い抜きも発生しているため、少なからず、路肩走行をしているライダーがいることは否めません。

また、右折待ちをしている車両は、例え右側からであっても、追い抜くことは禁止されています。右折する車両に直進するバイクが巻き込まれる、右折巻き込みになりかねない危険行為に他なりません。

追い越し

目の前の車両を追い抜くとき、一旦、追い越し車線に車線変更してから車両を追い越すことになりますが、ここで気を付けたいのが、センターラインが黄色の実線で引かれている場合です。センターライン(黄色の実線)は、追い越しのために、車線をはみ出すことを禁じてられています。

ただし、追い越すことは禁じていないため、実線をはみ出さず、かつ、きちんとウインカーを出せば、追い越しすることは問題ないといえます。

すり抜け

バイクでのすり抜けは、追い越し、追い抜きに該当することがあります。さらに、これまで説明したように、追い越し、追い抜きに違反性があれば、当然、違反とみなされる可能性のあるものです。普段から、追い抜き、追い越しを理解したうえで、違反しないかどうか、意識しながらバイクのハンドルを握りたいものです。

バイクのすり抜けは危険

交通渋滞時でも車両間をすり抜けていくバイク。バイクにしかない利点といえば利点ですが、場合によっては違反とみなされるばかりでなく、ライダーにとってもドライバーにとっても危険な行為でもあるのです。特に、ライダーにとっては、命に関わる事故にもなりかねません。

バイクのすり抜けがどれほど危険なのか、改めて確認していきたいと思います。

バイクのすり抜けが危険だとされる要因

特に、バイクのすり抜けで危険なのは、乗用車の左側をすり抜けていたバイクが、左折をしようとしていた乗用車に巻き込まれる、あるいは、乗用車の右側をすり抜けていたバイクが、対向車に道路を譲られた乗用車が右折するときに巻き込まれるという「巻き込み事故」だといえます。

また、限られた隙間を無理にすり抜けようとすると乗用車に接触することは決して珍しくありません。ドライバーと口論になることはもちろん、いうまでもありませんが、分が悪いのはすり抜けをしていたライダーに他なりません。

さらに、バランスを崩したバイクが転倒したうえ、ドライバーが発進して大事故になることも、実際に起こっていることです。

車を運転する人が気を付けたいこと

週末はバイクを乗り回していても、平日は自家用車で移動しているというライダーは、車を運転する側としても、バイクのすり抜けに対して気を付けられることは気を付けたいものです。

特に、巻き込み事故になりやすい右折・左折時には、すり抜けをしようとしているバイクがすぐそこにいるかもしれないと意識をして、確認を怠らないことが、まずは大切だといえます。

バイクを運転手する人が気を付けたいこと

車を運転する側だけでなくバイクを運転する側も、すり抜けをしようとしている目の前の乗用車が、もしかしたら直進するのではなく右折、左折するのかもしれないという意識を持つべきであることは言うに及ばずでしょう。

ライダーの皆さんに覚えておいていただきたいのは、悲しいことに、すり抜けによる事故が後を絶たないということです。また、これもひとつの事実ですが、すり抜けをしても目的地までの到着時間は「あまり変わりません」。交通事故時には、ドライバー以上にライダーの危険性が高いことは、皆さんの承知のとおりだと思います。

目的地までの時間が変わらないのであれば、急いですり抜けをするよりも、時間に余裕を持って、ゆっくりと向かいたいものです。

サンキュー事故も危険

サンキュー事故というように、優先権のある車両が優先権のない車両に対して、通行を優先させようとしたときに起き得る事故も、非常に危険であるといえます。日常的に、交差点で右折を待っている車両を見かけ「右折車に譲ってあげようか」ということは、よくあるものです。

皆さんも、直進車として譲ったり、右折車として譲ってもらったり、どちらの経験もあるのではないでしょうか。

右折車も右折車で「ありがとう」と片手をあげながら右折するわけですが、ここで、右折車両の左側から、バイクが直進してきて接触・衝突してしまうサンキュー事故が起こり得るのです。

サンキュー事故を防ぐためには、徹底的に右折車に譲らなければいいのですが、現実ではそうもいきません。ですが、対向車線に車列ができていたり、右折車のあせっている様子がみてとれたりするようなときは、右折車に譲りたくもなるものです。

では、どうすればサンキュー事故を防げるのでしょうか。まずは、直進車、つまり右折車に譲る側が、進路を譲る前に、左側のサイドミラーを確認して、接近するバイクはいないか、確認を徹底することです。若葉マークを付けていた頃は、右折車に譲るときも慎重だったはず。

しかし、運転に慣れれば慣れるほど確認を怠る傾向がみられます。ベテランドライバーほど、気を引き締めていただきたいところです。

では、右折車として進路を譲ってもらう場合はどうでしょうか。このとき、対向車に譲ってもらったことで、急いで通過しなければと、先方不注意の状態のまま右折してしまうことがあるのです。ここに、右折車の死角からバイクが直進してきたら、サンキュー事故になりかねません。

右折車の気を付けるべきポイントは、対向車の左側、右折車からみて右側を、ほぼ停止しているようなスピードで右折を始めながら、曲がるときにもバイクが飛び出してこないか、よく確かめるようにすると、万が一、バイクが飛び出して来たときにも停止することができるので、巻き込み事故の防止につながります。

ここでは、ドライバー目線のサンキュー事故についてまとめましたが、ドライバーはもちろんライダーも、運転中はいつでも巻き込み事故になりかねないことを意識しながら、安全運転を心がけていただきたいものです。もちろん、適度な休憩も忘れずに。

まとめ

今回は、バイクのすり抜けについて追い越し、追い抜きと合わせて説明しました。

追い越しは追い越し車線に移る進路変更をしてから目の前の車両を追い越すこと。対して追い抜きは、進路変更をしないまま、センターラインの内側で車両を追い抜く行為になります。いずれもすり抜けにあたりますが、場合によっては、道路交通法上、違反となることもありえます。

交通事故はもちろんですが、ライダーもドライバーも違反は避けたいところ。道路交通法をよく理解して、すり抜けによる違反を回避しながら、ライダーにとってもドライバーにとっても歩行者にとっても優しい運転を心がけたいものです。

 

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