挑戦するときは誰でも緊張してしまう、教習所でのバイクの卒検。


これからバイクの卒検を受ける方や、一度不合格になってしまった方の中には

「最後まで走れたのに落ちることがあると聞いて、怖くなった」
「最後まで走れたのに、不合格になってしまった」

という方もいらっしゃるかもしれませんね。


そこで今回の記事では、バイクの卒検ではなぜ最後まで走れても不合格になってしまうことがあるのかと、主な原因・対策について解説します。

詳しく丁寧に解説しますので、これから初めて卒検に挑む方も、卒検に再挑戦する方も、ぜひ最後まで読んでいってくださいね。

なぜ、バイクの卒検は最後まで走れても落ちる?

そもそも、なぜバイクの卒検はなぜ最後まで走れても、不合格になることがあるのでしょうか。

その理由は、バイクの卒検の点数をつける方式にあります。

バイクの卒検は、「これができていないから減点」という、減点法になっているんですね。

最初は全員、持ち点が100点でスタートします。
しかし、コースの途中でミスをすると、そこからミスの内容に合わせた点数が引かれていきます。

バイクの卒検の合格点は70点ですが、減点によって70点を切ってしまっても、検定官は中止を告げることはありません。

※検定官が中止を言い渡すのは、検定中止になる項目(転倒や、4回連続のエンストなど)に引っ掛かってしまったときのみです。


そのため、卒検を受けているときは

「できた!走りきれたし大丈夫!」

と思っていても、結果発表のときに

「あなたは70点を切っているので、不合格です」

と言われる事態が発生するのです。


バイクの卒検では、「走り切れた=合格」ではないことを、しっかりと覚えておきましょう。

ここからは、筆者が教習所に通っていたときの経験を元に、最後まで走りきれたのに不合格になっていた方がよく引っ掛かっていたポイントと、その対処法について解説します。

落ちる理由①:徐行の標識でしっかり徐行できていなかった


筆者が見てきた限りだと、最後まで走れたのに不合格になっていた方の理由としては、

「徐行の標識でしっかり徐行できていなかった」

のが一番多かったように思います。

徐行の標識で速度が下げられていないと、なんと20点も点数が引かれてしまいます。

バイクの卒検で引かれても大丈夫な点数は30点までなので、徐行違反をしただけで、実に3分の2もの枠を使ってしまうことに!

そうなると他の小さな減点が積み重なっただけで、すぐに不合格ラインに達してしまいますので、徐行は強く意識するようにしてくださいね。

 

徐行の対処法

徐行違反にならないためには

・徐行の標識までに速度を落とす
・速度を10km以下に落とす

のが大事です。

まず、徐行の標識を通り過ぎるときに、規定の速度以下になっていないと減点されてしまいます。

私の見てきた中では、最後まで走れたのに落ちた方は徐行が間に合っていない人が多かった印象がありますね。

「徐行の標識を見たら減速する」のでは間に合わないことが多いので、卒検のコースをしっかり覚えて、自分が思っているよりも手前から徐行を始めましょう。

 
また、徐行の際に速度が落とし切れていない場合、こちらも減点になります。

実は徐行には決められた速度はないのですが(決まりとしては「すぐ停止できる速度」、ということになっています)、時速10km以上だと減点になる可能性が大幅に上がります。

必ずしも「時速10km以下にしていれば大丈夫」ということではありませんが……

時速10kmより下になるよう意識して、速度を落としましょう。

※卒検のコースによると思いますが、場内はだいたい時速20km~30kmで走ることになるので、10km以下まで落とすのは意外と大変です。

筆者の主観ではありますが、「バイクが止まるんじゃないか」と思うぐらい、思い切りブレーキを効かせないと十分減速できないことが多かったですね。

この辺りは乗っている方の体重にもよると思うので(筆者は女性で40kg代だったので、なかなか減速できなかったのだと思います)、自分に合ったブレーキのかけ方を工夫してみてください。

 

落ちる理由②:乗車時の動作がきちんとできていなかった

 
乗車時の動作がきちんとできていなかったことによる減点も、卒検で最後まで走りきれたのに不合格になってしまう原因の1つです。

 
筆者の見てきた中では

・バイクに跨る前に、後方確認ができていなかった
・ミラーの調節をせずに、すぐ発進してしまった
・発進するときに、後方確認をしていなかった
・発進するときに、ウインカーをつけ忘れた

ことが引っ掛かり、減点になっている方が多かった記憶があります。

 
これらの減点は5点から10点と、点数自体はそこまで大きくありませんが、他のミスと重なると卒検の合格に響いてきます。

乗車時の動作は一つ一つ丁寧に、しっかり行うようにしましょう。
 

乗車時の動作で減点されないための対処法

 
乗車時の動作で減点されないために、卒検の前には必ずYoutubeの動画などで、発進の手順をおさらいしましょう。

特に忘れやすいのは次の3つだと思うので、それぞれに対する注意の仕方を解説します。
 
忘れやすいポイント①:跨るときの後方確認
 
跨るときの後方確認を怠らないコツは、ズバリ「発着場を歩道だと思いこむ」ことです!

バイクに跨るときには、足を高く上げなければなりませんよね。
もし後ろに人がいたら、その人を蹴ってしまいます……。

 
「実際に乗るときには、そんな場面ないでしょ」と思っていても、意外なところで後ろを見る必要性は出てきますよ。

たとえば、駐車場からバイクを出して、歩道から車道に出るために跨るとき……

「周囲に通りがかる人がいない」とは、言い切れませんよね。

「ここは自動車学校の練習場じゃなくて、歩道なんだ!」と思うと、自然と他の人に対する思いやりが出てきて、後方確認忘れの防止に繋がりますよ。

 
忘れやすいポイント②:ミラーの調節
 
ミラーの調節を忘れないコツは、「ミラーがズレていたらどうしよう」という緊張感を持っておくことです。

実際に、筆者はミラーの調整をしていたにもかかわらず、途中でミラーが倒れてきてパニックになり、卒検どころではなくなったことがあります。

前の人が転倒していたせいで緩んでいたようなのですが、走り始めてからミラーが手前に倒れてきたときは大変焦りました。

筆者が体験したのは極端な例かもしれませんが、実際にあった話ではあります(その回の卒検はどうしても集中することができず、検定中止で落ちました)。

発進時にミラーをチェックしておかないと、卒検の途中にミラーが倒れてくるかもしれません。

 
また、「ミラーで後方を目視する必要があるところで、十分に後ろが確認できず、パイロンに接触してしまった……」ということも起こりえます。

「ミラーにトラブルがあると、卒検に合格できないかも」という緊張感を持って取り組むようにすると、ミラーをチェックするのを忘れずに済むのではないでしょうか。

 
忘れやすいポイント③:発進時の後方確認・ウインカー
 
こちらも焦っていると忘れがちですが、「これから自分は歩道から車道に出るんだ」という意識を持つと、忘れにくくなると思います。

想像してみてください。ウインカーもつけていない、後方確認もしていないバイクが急に車道に飛び出してきたら、どうなると思いますか?

後方に車がいたら急ブレーキを踏ませることになりますし、場合によっては轢かれるかもしれません。

 
卒検をスタートするときのミスは「ここは試験場で、発進に必要な手順を忘れても追突されない」という無意識の思い込みによって起きることが多いです。

ですので、「もしここが本物の道路だったら……」と思うようにしてみると、ミスしづらくなるのではないでしょうか。

 

落ちる理由③:ウインカーを出し忘れていた・安全確認を怠っていた

 
ウインカーの出し忘れや、発進・右左折の際などに安全確認を怠るのが積み重なると、持ち点が減っていき、卒検に合格できなくなります。

この原因で不合格になってしまう方は、課題(一本橋やスラロームなど)は上手にできる方が多かった印象があります。

課題がクリアできても、安全運転に必要なことができていなければ、卒検には合格できません。

「課題はできているから大丈夫」と思わず、左右の確認やウインカーを出す位置まで、しっかりと気を配りましょう。
 

ウインカー・安全確認忘れの対処法

 
ウインカー・安全確認忘れの対策は、「早めに試験場に来て、卒検のコースを頭に入れておく」ことです。

いつ卒検のコースが発表されるかは教習所によってまちまちですが、集合時間から1時間から30分ほど前に行けば、卒検のコースが掲示されているのを見られると思います。

集合時間ギリギリに行くのではなく、早めに行って卒検のコースを見ることで、

「ここでウインカーを出さないといけないんだな」
「ここに塀があるから左右確認をしっかりと……」

と、ウインカーを出したり左右確認が必要な場所を確認して、頭に入れておきましょう。

 
また、「試験場を公道だと思い込む」のも、有効な対策です。

試験場では、車は走っていませんが……

公道だと「一見安全そうに見えても、死角から車が走ってきていた……」ということもあります。

 
「車が走ってこないから、安全確認を忘れても轢かれない」

ではなく、

「ここは公道だから、死角から車が走ってくるかも」

という意識を持ってみると、安全確認の大切さが分かり、見落とし忘れに繋がるのではないでしょうか。

 

落ちる理由④:急制動で規定の速度が出せていなかった

 
急制動がスピード不足でやり直しになることも、卒検で最後まで走りきれたのに落ちる原因になります。

急制動は、スピード不足だとやり直しのチャンスが与えられる課題ですが……

実はやり直しになってしまった場合、持ち点が10点引かれます。

 
卒検での10点はかなり大きな減点なので、他のミス(ウインカー忘れなど)が重なると、走り切れても合格できなくなる可能性が高くなってしまうんですね。

急制動ではしっかり規定以上のスピード(40km以上)を出せるように気をつけましょう。

 

急制動でスピード不足にならないための対処法

 
急制動でスピード不足になるのを防ぐためには、スムーズなギアチェンジができるようになるのが第一です。

教習所にもよると思いますが、おそらくスピードを上げるために使える距離はあまり長くない(30mほど?)のではないでしょうか。

そのため、ササっと3速に入れて加速しないと、パイロンにつくまでに十分なスピードが出ません。

ですので、

・できるだけ2速で進入する
・または、1速から3速にすぐギアチェンジする

のどちらかができるようになっておきましょう。

 
「アクセルを戻す⇒クラッチを握る⇒シフトペダルを蹴る」の動作が順序よくできるようになっていれば、1速からスタートしていても、3速できつめに加速すれば十分速度は出ます。

ギアチェンジが苦手な方は、できるだけ2速で進入し、ギアチェンジの回数を減らして挑んでみてください。

 
また、スピード不足になってしまう方に多いのが「止まれなかったらどうしよう」という恐怖心を抱えていることですね。

※筆者もそのタイプだったので、そう感じる方の気持ちはよく分かります。バイクでの時速40kmって、けっこう怖いですよね……。

ですが、正しい手順を踏めば、路面が濡れていてもバイクはきちんと止まれます。

ですので、怖がらなくても大丈夫です。エンジンブレーキ、リアブレーキ、フロントブレーキを順番通りに使えば、あの狭い線の間でも、バイクは止まりますよ。

 
※決してフロントブレーキだけで止まろうとしないでください!バイクが前につんのめり、転倒に繋がります。

転倒してしまうと恐怖心が増してしまうので、
「エンジンブレーキ⇒リアブレーキ⇒フロントブレーキ」
の順番は必ず守るようにしてくださいね。

 
「止まれるか分からなくて急制動が怖い!スピードが出せない!」という方は、練習の時間に一度思い切りスピードを出してみて(42km~45kmほど)、「止まれた!」という経験を積んでおくと、スピードが出しやすくなると思います。

練習のときから成功体験(できた!という感覚)を積み重ねて、本番でも練習の成果を発揮できるようになるためにも、日々の練習を集中して行ってみてください。
 

落ちる理由⑤:ギアチェンジが適切にできていなかった

 
これは珍しい例だと思いますが、実際に筆者が見てきた人の中には、卒検のほぼ全ての行程を1速で走ってしまい、不合格になった方がいました。

おそらく、検定中止になる項目には引っ掛かっていなかったので、途中で止められはしなかったのだと思いますが……

その方は結果発表の際、検定官に「公道では、遅すぎると交通の流れに乗れなくて危ないから、合格にすることはできない」と言われていました。

流石に私も、これが原因で落ちた方を見たことがあるのは一度だけですが、「人間は焦るとこういうミスもしてしまうんだな」と思ったので、一応書かせていただきました。
 

ギアチェンジを適切に行うための対処法

 
この項での注意点は「状況に合わせて、適切なギアを使おう」ということなので、次のことだけ覚えておいていただければ大丈夫だと思います。

〇発進するとき:1速
〇場内を走るとき:2速
〇急制動をするとき:2速から3速
〇一本橋を渡るとき:1速
〇その他の課題:自分の技量に合わせてギアチェンジ

※ちなみに、筆者はクランクが苦手すぎたので、1速で通過していましたが、不合格にはなりませんでした。
(減点はされていたかもしれませんが、結果発表時に指摘されなかったので詳細は分かりません。すみません)

場面に応じて適切なギアを使って、減点されないよう気をつけましょう。

 

まとめ

今回の記事では、バイクの卒検で最後まで走れたのに落ちる理由と、その対処法について解説しましたが、いかがでしょうか。

バイクの卒検は減点式+検定中止の項目に引っ掛からなければストップがかからない、というシステムなので、最後まで走り切れても、細かいミスが重なると不合格になってしまうこともあります。

ですので、一つ一つの注意点に気を付けて、一発で合格できるよう、気を引き締めて挑むようにしましょう。

この記事が、これから卒検を受ける方、卒検にリトライする方の助けになれば幸いです。